こんにちは。ミスターミックス(MRMYX)です。
この記事では「モブ・ディープ(Mobb Deep)で聴くべき曲は1曲しかない」ということについてお話しします。
モブ・ディープを「客観的に解説する」というよりかは、8割方、「僕の持論展開」記事ですね。
と、その前に「モブ・ディープって誰やねん」という方のために簡単にモブ・ディープを説明します。
「モブ・ディープ自体は知ってるよ」という方はここは飛ばしてください。
モブ・ディープ(Mobb Deep)とは?
モブ・ディープ(Mobb Deep)は、1991年に結成し90年代から2010年代にかけて活躍した、ニューヨークおよびクイーンズを代表するヒップホップグループの1つで、ダークでハードコアなストリートラップの代表的存在です。
ヒップホップの2人組みグループとしては最も成功したグループの1つでもあります。
メンバーはプロディジー(Prodigy)(右)とハヴォック(Havoc)(左)の2名。
ハヴォックはラップだけでなくグループのトラックメイキングも手がけています。
1995年(当時2人は21歳)にリリースされたセカンドアルバム “The Infamous” は名盤と見なされており、そこに収録されている “Shook Ones Pt.II”(シュック・ワンズ パート2) は90年代ヒップホップを代表する名曲の1つとして多くの人に愛されています。
2017年、プロディジーが持病の入院中に亡くなり、グループは解散状態となりました。
モブ・ディープはこのようなグループです。
モブ・ディープは、「ヒップホップの2人組みグループとしては最も成功したグループの1つ」なんですよね。
それが本当にそうなのか、ちょっとこちらの再生回数を見てみてください。
あくまでSpotifyしかチェックしていないんですが、曲の再生回数を見てみると、ギャングスター(Gang Starr)やピート・ロック&C.L.スムース(Pete Rock & C.L. Smooth)よりも上なんですよね…。
下の表は、90年代にリリースされたヒップホップかつ、2人組みの曲の主だったものだけを比較したものです。(2022年6月14日時点)
曲名 | アーティスト | 再生回数(単位:回) |
---|---|---|
Shook Ones Pt. II | Mobb Deep | 3億3000万 |
Nuthin’ But A “G” Thang | Dr. Dre, Snoop Dogg | 1億9000万 |
Survival of the Fittest | Mobb Deep | 1億5000万 |
Full Clip | Gang Starr | 1億 |
Work | Gang Starr | 7900万 |
Summertime | DJ Jazzy Jeff & The Fresh Prince | 7000万 |
They Reminisce Over You (T.R.O.Y.) | Pete Rock & C.L. Smooth | 5500万 |
Mass Appeal | Gang Starr | 4600万 |
Rump Shaker | Wreckx-N-Effect | 2900万 |
Boom! Shake The Room | DJ Jazzy Jeff & The Fresh Prince | 2500万 |
How High | Redman & Method Man | 1800万 |
Livin’ Proof | Group Home | 1700万 |
The Creator | Pete Rock & C.L. Smooth | 1000万 |
Crossover | EPMD | 330万 |
Props Over Here | Beatnuts | 87万 |
これを見てわかる通り、「曲単位」で見たときのモブ・ディープの曲の再生回数というのは圧倒的1位なんですよね。これにはちょっと驚きました。
(というか、意外と2人組みのグループって少ないですね。こうやって見てみると…。)
という感じで、モブ・ディープというのは非常に人気の高いヒップホップアーティストの1つです。
このアルバム、見たことある人は多いのでは?
90年代ヒップホップを聴き始めると必ずモブ・ディープの名前や、このアルバム “The Infamous” のアートワークを見かけることになると思います。
90年代ヒップホップを聴いてる人だったら、「すでに聴いたことがある」もしくは「見たことあるけどまだ聴いてない」のどちらかの人が多いんじゃないですかね。
90年代ヒップホップを聴いていて、このアートワークを「全く見たことがない」という人は少数なんじゃないかなと思います。
それくらいいろんなところに出てきますよね。これ。
そして、2017年にプロディジー(Prodigy)が亡くなった際にも多くの追悼の声が上がり、いまだに日々SNSなどでも彼の名前を見かけることが多いですが、その彼らの楽曲全てが素晴らしいかというと実際そんなことはないと僕は思っています。
モブ・ディープ(Mobb Deep)で絶対に聴くべき曲は1曲だけ
モブ・ディープで聴くべき曲は1曲だけです。それは結局、“Shook Ones Pt.II” 1曲。
1995年にリリースされた、モブ・ディープのセカンドアルバム “The Infamous” は90年代ヒップホップの名盤として名高いですが、このアルバムで繰り返し聴ける曲は1曲しかないと思います。それが “Shook Ones Pt. II” です。
逆にこの “Shook Ones Pt. II” はモブ・ディープが特別好きじゃなくても絶対に聴いておかなければいけない、「90年代ヒップホップ」、またそれを超えて「ヒップホップ全体」「90年代の音楽」すらも代表する超ビッグな1曲です。
モブ・ディープは、アーティストとしては全作品聴く必要はないと思うんですが、この1曲だけは本当に多くの人に届いて欲しいですね。
というより、実際にエミネム(Eminem)が主演した映画「8マイル(8 Mile)」のオープニングソングとしてこの曲は使われていて、その映画で耳にしたことがある人も多いはずです。
8 Mile (2002)
普通なら、めちゃくちゃ有名なアルバムで、なおかつ誰もが認める名曲も入っていたら、「このアルバムは “Shook Ones Pt. II” 以外もどの曲もオススメなのでぜひ聴いてみてください!」で終わりじゃないですか。
でも、このアルバムはそんなに単純にオススメできないんですよね…。
一応、ヒップホップの世界では「名盤」と見なされているアルバムなんですが、決して万人にオススメできる内容ではないと思います。
そもそも、大のヒップホップ好きである僕ですら1曲しか聴かないんですね。このアルバムは。
それが、もう何度も出てきていますが、“Shook Ones Pt. II” です。
もうこのアルバムではこれしか聴かなくていいと思いますね。正直。
その理由としては以下のような理由があります。
このアルバムは…
・どの曲も輪郭がぼんやりしている
・ほとんどすべて地味な曲
・ダークで暗い曲が多い
・ハードコア過ぎて刺さる層が狭い
・BGMとしても使えない
・DJプレイとしても使えない(クラブ映えしない)
とにかく、普通に聴けない、DJでも使えない、っていう感じなんですよね。
モブ・ディープってほとんど2択なんですよ。
1、めちゃくちゃハマる人が色んな作品を聴く
2、そうでない人は “Shook Ones Pt. II” だけ聴いておけば大丈夫
この音楽が最も生きるシチュエーションを想像してみると、ものすごいコアなファンが音楽に集中した状態で聴く状態、つまりライブ的なシチュエーション、そういう状態が一番生きるのかな〜と僕は思います。
この「ダーク」で「ハード」な曲たちをBGMとしてかけておくのは違う気がするし、だからと言ってクラブでかけるにしても刺さる層が狭過ぎて、DJの独り善がりの選曲になってしまう気がするんですよね。フロアにいる人みんなが自然にノレないというか。DJ的に考えると、ほとんどすべての状況においてフロアにはハマらないですね。
となると、超コアなファンが集中して聴いている状態、つまり「ライブ状態」、それしかないんじゃないかなと僕は思います。
もしくは、モブ・ディープがめちゃくちゃ好きな人が家で1人で聴いてるとか、イヤホンで移動中に聴いてるとか、車で1人で聴いてるとか、それはありだと思います。
とにかく、音楽にフォーカスしてる状態じゃないとハマらない曲ばかりで、人が複数いる場面でかけられる曲はほとんど入ってないのではと思います。
このアルバムに入っている曲のほとんどは「モブ・ディープのコアなファン」のみに刺さる音楽だと思います。
非常に有名なアルバムなので、まず全曲サーっとチェックするくらいは良いと思うんですが、このアルバムを深く繰り返し聴くのはもっともっと後で良いと思います。
とりあえず90年代ヒップホップをまだすべて通過してない人は、“Shook Ones Pt. II” だけで大丈夫です。
それ以外の曲はそんなに重要な曲は入ってないです。(「良い曲が入っていない」ということではありません。)
それよりも90年代ヒップホップ全体の重要曲を先に聴いた方が良いですね。
その後で戻ってきて聴くので全然大丈夫です。このアルバムは。
90年代ヒップホップを一通りすべて聴いてきた僕ですら、ほとんど聴かないし、DJやプレイリストでも使わないですからね。
具体的に言うと、
“Survival of the Fittest” は人気曲としておさえておくために聴いてるだけ。
“Give Up The Goods” は ピート・ロック(Pete Rock)の “Fakin’ Jax” の元ネタとして、ネタ部分だけを繰り返し聴くだけ。
“Temperature’s Rising” はアルバム内では頭1つ抜けてる(ちょっとだけキャッチー)けど、90年代ヒップホップ全体で考えれば地味な曲だし、輪郭もぼんやりしていて、僕は聴かないですね。
“Cradle To The Grave” はかなり渋い、かなり地味な曲ですが、これはBGMとして使ったり、DJでBGM的にプレイするのはありですね。それでも超地味な曲なので、この曲も「必聴」というような曲では決してなく、かなり上級者向けです。
曲名をここで挙げてすらないものはどんなシチュエーションでも一切聴かないです。
(このアルバムのファンの方すみません…。)
ラップを分析するにしても、モブ・ディープ以外にも山ほど良いラップをしているラッパーはいるわけで、そんなにモブ・ディープの地味な曲を深掘りしていく必要はないのかなと僕は思っています。
もしモブ・ディープのラップを分析するんだとしたら、“Shook Ones Pt. II” だけで良いと思います。
逆に 「“Shook Ones Pt. II” だけは超ディープにインプットする」みたいな、そんな感じのインプットの仕方が良いんじゃないかなと思ってます。
とにかく、曲の粒が小さいです。“Shook Ones Pt. II” 以外は。
これはこのアルバムだけの話じゃなくて、モブ・ディープのすべての曲を含めてそうなんですよ。
ピート・ロック(Pete Rock)とか、DJプレミア(DJ Premier)とか、ドクター・ドレー(Dr. Dre)とかビギー(The Notorious B.I.G.)みたいに、「あれもこれも重要」「どれも絶対に外せない」みたいなアーティストではないんですよね。
モブ・ディープで重要な曲は本当に “Shook Ones Pt. II” しかないです。
この1曲だけおさえておけば、本当に大丈夫です。
一応、僕自身はこのアルバムを紹介するためにモブ・ディープの曲は改めて全て聴きました。モブ・ディープとしてリリースしているアルバムやシングルはもちろんのこと、モブ・ディープとしての客演曲、プロディジーとハヴォックそれぞれのソロとしての作品、客演作、全て聴きました。その上での結論です。
「自分はモブ・ディープのコアなファンだ」「モブ・ディープがめちゃくちゃ好きだ」と思う方は、モブ・ディープの作品を全部聴いていけば良いと思うんですが、そうでない「一般のリスナー」や「一般のDJ」は、本当にこの1曲だけで大丈夫です。
ちなみに僕自身は、そんなにモブ・ディープが好きじゃないですね…。
なんか男臭いんですよね。華がないというか。
特に2000年代は本当に男臭い…。
なので、自分自身も1回チェックしたくらいで、全然聴いてないです。
繰り返し聴ける、DJやプレイリストでも使えるのは、このあと紹介する僕のモブ・ディープ プレイリストに入れてる曲くらいです。
ただし、そのプレイリストでさえ、聴けばよりモブ・ディープの音楽を理解できるし、僕自身は聴いてて楽しいんですが、別に万人に聴いて欲しいというほどでもないです。
とはいえ、これだけ「聴かなくてもいい」と言うと、逆に気になりますよね。
(気にならない人はここで読むのやめちゃって大丈夫です。“Shook Ones Pt. II” だけ伝われば充分です。
ここより下は「もっと聴きたい人」向けの内容なので。)
そんな方は4段階で聴いていくのが良いと思います。
1段階目は僕のモブ・ディープ プレイリストを聴く。
この選曲はモブ・ディープを知らない人でも聴いてて楽しめる選曲にしてあります。
かなりDJ的な選曲ですね。全曲DJで使えます。割と気軽に誰でも楽しめる感じ。でもその代わり重要な曲があんまり入ってないっていう…。
「有名だけど、伝わりづらい曲」は一切入ってないです。
そして、自分自身が純粋に好きな曲です。すべて。
後半の客演系の曲については、モブ・ディープがそんなに光ってるわけではないんですが、曲としてヒップホップの中でかなり有名なものです。「ヒップホップ全体の中で重要な曲」なのでこのあたりはチェックしておいても良いかなと思います。
“MOBB DEEP”
selected by MRMYX
Spotify Playlist ♪ ▶︎ spoti.fi/3OangaY
2段階目は、「世間で名曲とされているものを聴く」です。
僕自身は全く繰り返し聴かないし、DJやプレイリストでも一切使わないんですが、下のリストにまとめた曲は一応世間でモブ・ディープの人気曲、名曲とされているものです。
「有名どころもおさえておきたい」という方はこちらもチェックしておくと良いと思います。
TRACK | Album | YEAR |
---|---|---|
Survival of The Fittest | The Infamous | 1995 |
Temperature’s Rising | The Infamous | 1995 |
Hell On Earth (Front Lines) | Hell On Earth | 1996 |
Quiet Storm | Murda Muzik | 1999 |
Keep It Thoro (Prodigy) | H.N.I.C | 2000 |
Put ‘Em In Their Place | Blood Money | 2006 |
Have A Party | Blood Money | 2006 |
3段階目でようやく、「アルバムを通して “The Infamous” を繰り返し聴く」ですね。
作品を個別に聴く場合は、圧倒的にセカンドアルバム “The Infamous” の質が高いので、まずはこれを繰り返し聴いてください。
このアルバムは地味な曲が多いとは言っても、90年代の東海岸のムードはめちゃくちゃ感じられるし、ハードコアラップの先駆けみたいな作品だし、ラップのスキルには文句のつけようがありません。
もしこのアルバムをフルで聴くのであれば、とりあえず90年代ヒップホップを1、2周聴いてから聴いた方がモブ・ディープ独自の良さや特色、他のアーティストとの違い、東海岸ヒップホップの特徴などがより深く理解できるはずです。
90年代ヒップホップや90年代東海岸ヒップホップのバイブスが好きな人や、ラップを英語でちゃんと聴く人は聴く価値があると思います。
ずっと聴いてるとじわじわと良さが沁みてきますね。
そしてここまで聴いて、さらに聴いていきたいという場合のみ、個別の作品を順にチェックしていくのが良いと思います。
ただし、何度も言いますが、モブ・ディープはすべてのリスナーがすべての作品をチェックするような、そこまでのアーティストではありません。
しかも、”The Infamous” 以外のアルバムやその他の作品は本当に微妙な曲だらけです。特に年を重ねるにつれて切れ味が悪くなっていくというか、微妙な曲が増えてきます。
“The Infamous” がお気に入りのアルバムにあがる人でも、それ以降の作品もすべて好きだという人は相当少ないはずです。
この「4段階目」の聴き方をするのは、「本当に本当にモブ・ディープが好き」な人だけでいいと思います。
とにかく、モブ・ディープは “Shook Ones Pt. II” を聴きましょう。
この曲を本当に伝えたい。
それ以外は何も伝わらなくても別にいいです。
モブ・ディープは「数で聴く」よりも、「濃く聴く」方が大事です。
この曲だけがしっかり伝わるのが本望です。
ということで、最後に “Shook Ones Pt. II” のミュージック・ビデオを見て終わりにしましょう。
Mobb Deep – Shook Ones Pt. II (1995)
参考記事 ▶︎【Shook Ones Part II】の和訳:Mobb Deep(モブ・ディープ)
聴けばわかると思いますが、この曲一切ポップに寄せてないんですよ。「ポップ要素」ゼロですよ。トラックもラップも。ピアノのメロディーもダークだし、耳に残るホーンの音もめっちゃハードコアな音色じゃないですか。ドラムパターンもめちゃくちゃ淡白で、最初から最後までずっと一緒ですよ…。
でも、その「ハードコア」を極めに極めた結果として、最終的にポップソングにまで昇華された奇跡の1曲だと思いますね、本当に。
モブ・ディープをもし買うとしたら、本当にこのアルバムだけで充分だと思います。
それ以外はデータで曲単位で買うか、Spotifyで聴くか、ですね。(あくまで個人の意見です。)
Amazon
Download this Track ▶︎ Mobb Deep – Shook Ones Pt. II(mp3)
Buy this CD ▶︎ Mobb Deep – The Infamous(CD)
“MOBB DEEP”
selected by MRMYX
Spotify Playlist ♪ ▶︎ spoti.fi/3OangaY
ちょっと全体的に、否定的な内容多めで後味悪い記事になってしまったかもしれませんが、僕の思いとしては、「微妙な伝わり方しないでほしい」ということですね。
ちゃんと「魅力的なところが伝わってほしい」ということです。
モブ・ディープも有名だし、”The Infamous” というアルバムも超有名なわけですよ。
だけどそれをそのままなんの案内もなしに聴いちゃうと、ちょっと良さが伝わりづらいかな?と思ったわけです。
そこに僕の経験値や、モブ・ディープに対する考え、プレイリストなどがあると良い感じに「ガイド」になって、モブ・ディープの魅力がストレートに伝わるかなみたいな、そういう考えがあってこの記事を書きました。
この記事によってモブ・ディープの魅力がきちんと伝われば幸いです。
軽く聴くだけでいい人はとりあえず “Shook Ones Pt. II” を繰り返し聴いて、もっと深く聴きたいという人は、記事内で解説したように第1段階から第4段階に向けて徐々に聴いていくとモブ・ディープの魅力が理解しやすいと思います。
以上、長々と最後までお読みいただきありがとうございました。
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