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ポール・ジョンソン(Paul Johnson)が亡くなる
シカゴハウス第2世代の代表的な存在の1人で、ダフトパンク(Daft Punk)にも大きな影響を与え、「Get Get Down」で世界的なヒットを持つDJ/プロデューサーのポール・ジョンソン(Paul Johnson)が2021年8月4日に亡くなりました。50歳でした。
2021年7月頃から入院していたようですが、8月4日にイリノイ州エバーグリーン・パークのリトル・カンパニー・オブ・メアリー病院(Little Company of Mary Hospital in Evergreen Park)で息を引き取りました。
https://www.instagram.com/johnsongram/
インスタグラムでも数日前から入院している様子をアップしていたので少し心配していたのですが、こんなにあっさりと亡くなってしまうとは…。
死因に関しては公には「コロナ」となっていますが、僕のSNSの投稿を普段から見ている方は”お察し”ください。
持病など詳しくはわかりませんでしたが、おそらく元から何かしらの死因になるようなものがあったのだと思います。
(最低限、簡潔に説明すると、今って世界中で、死ぬ際にPCR検査をして「陽性」だとどんな他の死因があっても「コロナ死」というふうに発表されているんです。コロナの話はこの記事の中であまりしたくないので、詳しくは調べてみてください。参考)
とにかく、亡くなってしまったことには変わりはないので、安らかにお眠りください。
たくさんの素晴らしい音楽をありがとう。
ポール・ジョンソン。
ポール・ジョンソン(Paul Johnson)とは?
ポール・ジョンソン(Paul Johnson)は、1971年1月11日イリノイ州シカゴ生まれで、シカゴハウス、ゲットーハウスのDJおよびプロデューサーです。
この音楽の歴史の初期から最盛期、そしてつい最近までずっと活動を続けてきたアーティストで、ハウスミュージックのアイコン、パイオニアー、レジェンドとして多くのハウスミュージシャンやダンサーたちから愛されています。
初めはブレイクダンサーとしてキャリアをスタートし、1980年代後半、ロン・ハーディー(Ron Hardy)やファーリー “ジャックマスター” ファンク(Farley “Jackmaster” Funk)など初期のハウスDJにインスパイアされ、13歳の頃にDJに転向。1987年には楽曲制作をスタートさせ、シカゴハウス第2波の中で主要アーティストの1人として活動してきました。
地元シカゴの「ダンスマニア(Dance Mania)」、「カジュアル(Cajual)」、「リリーフ(Relief)」、「ムーディー(Moody)」などのレーベルを拠点としながらも、ヨーロッパのレーベル「ディフェクテッド(Defected)」、「ピースフロッグ(Peacefrog)」、「ジャックス・アップ・ビーツ(Djax Up Beats)」などからもリリースしてきており、ローカルとインターナショナル両方で成功をおさめているプロデューサーです。
ローリング・ストーンズの記事にこのようなストーリーが書かれていました。
ジョンソンのリリースはすぐにシカゴのマストアイテムとなった。
「1つ明確なことがあった。それはポール・ジョンソンのレコードは到着するとすぐに売り切れるということ」 シカゴの「ホットジャムズ」で働いていたフランキー・ヴェガは語る。
「俺はお客さんによく言っていた。『聴く必要はない。とりあえず買っておきな。』みんな彼のレコードが良いことを知っていたし、みんな買っていたよ。」(5Magより)
1999年には、「Get Get Down」でUKチャート5位を記録し、世界的な大ヒットを獲得しました。
本人はこの曲が「他の曲にかけてきた努力や情熱を全て吹き飛ばしてしまった」ように思っているらしく、あまりよく思っていないようです。この曲がこんなにヒットするとも思っていなかったみたいですね。
ポール・ジョンソン(Paul Johnson)の音楽
メロディーとかがほとんどなくて(言うまでもなく、リリックとかもほぼないんで「メッセージ性」みたいなものは全くないですよね)、ムードじゃなく、リズム、ビート、音で遊んでる感じ。それが逆にまた独特なゲットーハウスのムードを作り出している感じ。個人的にはすごい “純粋な音楽” だな〜と思います。装飾音みたいなものがなく、全ての音が「体が動く」「ダンス」というところに機能してくる。
1〜2小節以上にまたぐフレーズがほとんどない。
ジェームス・ブラウンの「1拍目だけで踊れる」みたいな、その感じが全ての小節の全ての拍でずっと続いていく感じ。
短いフレーズがひたすら繰り返し、重ね合わさり、抜き差しし、それが独特のグルーヴを作っていく。
フィルとかわかりやすい展開のつけ方が一切なく、どちらかというと引いて、また戻すみたいな展開の作り方。
足し算じゃなく、引き算。
反復、ボイスサンプル、象徴的なドシンプルな速い(BPM120後半)ハウスのビート、ラフなサウンド、ミキサーのフィルター使い。
めちゃくちゃ単純なんだけど、めちゃくちゃ面白い音楽だと思う。
音楽のスタイルの基本は同じなんだけど、ソウルフルなネタを調理することもできるし、機械的なエレクトロニックなマシンサウンド、アシッドサウンド、へんてこりんなエレクトロニック・ミュージック、なんでもいける。
ハウスそのもの。ザ・ハウス。
生まれた当初の「ハウス」ってまだ成熟してなくて結構いびつな変な形をしていて、それを「真のハウス」サウンドにした。そんな感じのアーティストの1人なんじゃないですかね。
逆にその後の「ハウス」って、亜流というか、結構形やサウンドが変わっちゃってるんだけど、ポール・ジョンソンの音楽っていうのは、古いスタイルも踏襲してるし、なおかつその後のテックハウスとか、ジュークとかその他の様々なダンスミュージックのルーツにもなってるし、ほんとハウスそのもの。
ハウス・ミュージックのアイコニック(象徴的)なサウンド。
特に「シカゴハウス」や「ゲットーハウス」というものを通過しようとしたときに、絶対に避けては通れない名前ですね。
ダフトパンク(Daft Punk)のフェイバリットアーティスト
ポール・ジョンソンの話をするときに必ず出てくるのが、ダフト・パンク(Daft Punk)の「Teachers」っていう曲で最初に言及されるアーティストだということ。
この曲は、ダフト・パンクがハウスミュージックの先人たちの名前をひたすらシャウトしていくっていう曲なんですが、その数多くの名前の中で「ポール・ジョンソン」が一番最初に出てくるんですね。
それだけ、彼らにとっても大きな存在、ヒーローであったということです。
車椅子のDJ、障害を持つミュージシャン
ポール・ジョンソンは、「障害を持つミュージシャンのロールモデル」としても尊敬されている一面があります。
1987年に銃で撃たれて足を負傷し、後々完全に切断、さらに2010年に自動車事故によってもう片方の足も失ってしまうという、かなりの不幸が重なっています。
しかし、この障害について本人はこのように語っています。
I never think about me when I’m spinning – just the people who are dancing.
Paul Johnson Exclusive S&S Interview (Full Uncut) (2014)
俺はDJをしてるとき自分のことは全く考えない。ただ踊ってる人のことだけ考えてるんだ。
“The crappy life I’ve had health wise, that’s been nothing, man. That’s just been a shadow to what I’ve been doing, I don’t even see it, nobody sees it. It’s all about the music.”
自分が健康に過ごしてきたクダらない人生には、そこには何もなかった。それは自分がやっていることの影に過ぎなかった。自分ですらそこを見ることはない。誰もそこは見ない。音楽が全てなんだ」
Even this disability couldn’t stop me. Nothing could.
障害は僕を止めることはなかった。何もね。
ポール・ジョンソン(Paul Johnson)の死に対して、多くのDJやアーティストから哀悼の意が示される
So sad to hear that Paul Johnson has lost his fight. Today has been tragic for our scene. Much love to my friends in Chicago & Detroit. ❤️ pic.twitter.com/dLY98CKKDN
— Simon Dunmore (@SimonDunmore) August 4, 2021
サイモン・ダンモア「ポール・ジョンソンが闘いに負けたと聞いてとても悲しい。今日は我々のシーンにとって悲劇になった。たくさんの愛をシカゴとデトロイトの友人たちへ送る」
Today We Have Lost An Great Legend Of Our World House Community• Thank You God For His Work That You Installed In Him• Mr. Paul Johnson. 🎶🎧😭 pic.twitter.com/nd8Pn8b3VO
— RP BOO Rolling Stone (@RP_BOO_) August 4, 2021
RPブー「今日、僕たちは世界のハウスコミュニティーから偉大なレジェンドの1人を失った。彼の成し遂げたことに感謝。ミスター・ポール・ジョンソン」
v sad news about paul johnson. he’s one of the very best organisers of rhythm in house music and taught me so much through his music. in my dj sets from the last 30 years, he’s the only artist who has appeared in virtually every one of them. #pauljohnsonhttps://t.co/QLoetlWyCx
— matthew herbert (@matthewherbert) August 5, 2021
マシュー・ハーバート「ポール・ジョンソンについてのとても悲しいニュースだ。彼はハウスミュージックの中でも最高のリズムの構築者の1人だった。そしてとてもたくさんのことを音楽を通じて教えてくれた。僕のこの30年のDJセットの中で、彼は唯一全てのミックスに登場するアーティストなんだ。」
Thank you for what you did for music RIP Paul johnson
— Dj Paypal (@DJPAYPAL) August 4, 2021
DJペイパル「あなたが音楽のためにしてくれたことにありがとう。安らかに。ポール・ジョンソン」
この他にもカール・コックス(Carl Cox)、キンク(KiNK)、ケニー・ラーキン(Kenny Larkin)、スティーブ・ポインデクスター(Steve Poindexter)、ミスター・V(Mr. V)、ペギー・グー(Peggy Gou)、リル・モフォ(Lil’ Mofo)さんなど多くのDJやアーティストが哀悼の意を示していました。
ポール・ジョンソン(PAUL JOHNSON)の作品
PAUL JOHNSON PLAYLIST
ポール・ジョンソンの曲を改めて聴き、またその素晴らしい音楽の数々をこれを読んでいる皆さんにも伝えるためにプレイリストを作成しました。
(Spotifyだけでも結構色々聴けるんですね。むしろYouTubeにはなくてSpotifyにしかないのもありました。)
YouTube版は、Spotifyの選曲に基づいたバージョンと、YouTubeにしかない曲のみでまとめたリストの2種類あります。YouTubeでしか聴けない曲の中にもポール・ジョンソンの曲の中では絶対に欠かせない重要な曲がいくつかあるので、合わせてチェックしてみてほしいです。
これまでポール・ジョンソンを知っていた方も知らなかった方も改めてこの機会にポール・ジョンソンの曲を聴いてみて下さい。
SPOTIFY PLAYLIST
“PAUL JOHNSON”
BY MRMYX
YOUTUBE PLAYLIST
“PAUL JOHNSON”
BY MRMYX
TRACKLIST
TRACK | ARTIST | LABEL | YEAR |
---|---|---|---|
Hear My Drops | Paul Johnson | Riviera | 1999 |
A Little Suntin Suntin | Paul Johnson | Peacefrog | 1996 |
Bump Talkin’ | Paul Johnson | Peacefrog | 1995 |
Let Me See Your Butterfly | Traxmen, Paul Johnson | Dance Mania | 1994 |
Fuckin Sucking | Traxmen, Paul Johnson | Dance Mania | 1994 |
Feel My M.F. Bass | Paul Johnson | Dance Mania | 1994 |
I’m Gonna Dance Tonight | Paul Johnson | Moody | 1999 |
It’s A Love Thang | Paul Johnson | Moody | 1999 |
Hit It Up | Paul Johnson | Riviera | 1999 |
The Hole Is Mine | Paul Johnson | Riviera | 1999 |
Acid Is Friend Of Mine | Paul Johnson | Farris Wheel | 2018 |
Heat (Paul Johnson Remix) | Jack The Box, Bobby Starr, Tyree Cooper, Mandel Turner | Hypernatural | 2020 |
Dance With Me (Patrick Toping Remix) | Paul Johnson | Moveltraxx | 2020 |
Music’s In Me (Superboys Remix) | Paul Johnson | DJ Center | 2009 |
Back From Spin (Paul Johnson God Remix) | Samy Handy | Babaorum Production | 2010 |
House Illusion | Paul Johnson | Moody | 1999 |
Donkey Kong (Real One) | Paul Johnson | Djax-Up-Beats | 1994 |
Psycho King | Paul Johnson | Djax-Up-Beats | 1994 |
Play With My Bassline | Paul Johnson | Dope Wax | 2016 |
Strange Buzz | Paul Johnson | ACV | 1996 |
Organic Technology | Paul Johnson | ACV | 1996 |
Play Those Horns (Horny Warehouse Mixx) | Paul Johnson | Warehouse | 1994 |
Get Get Down (Loopapella) | Paul Johnson | Moody | 1999 |
He Loves Me 2 (Paul Johnson Dancefloor Dub) | CeCe Peniston, Steve “Silk” Hurley | Silk Entertainment | 1999 |
Music’s In Me | Paul Johnson | DJ Center | 2009 |
YOUTUBE PLAYLIST
“PAUL JOHNSON (YouTube Only)”
BY MRMYX
TRACKLIST
TRACK | ARTIST | LABEL | YEAR |
---|---|---|---|
I Want U To Ride Me | Paul Johnson | Dance Mania | 1995 |
Tak A Lickin (And Keep On Ticking) | Paul Johnson | Dance Mania | 1995 |
Trax 4 Da Women | Traxmen, Paul Johnson, DJ Lil’ Tal | Dance Mania | 1994 |
It’s House (Paul Johnson Remix) | Chip E | Chicago Style | – |
Get On My Camel | Paul Johnson, First Choice | Real Groove | 1999 |
Boogie Til’ You Oogie | Paul Johnson, A Taste Of Honey | International House | 1998 |
White Winds | Paul Johnson | Crydamoure | 1997 |
The Chitown Nightlife | Paul Johnson | Trax | 2003 |
Let Me C U Move (Basement Mix) | Chicago Traxmen | Underground Construction | 1996 |
Trax 4 Da Women (Ian Pooley Remix) | Traxmen, Paul Johnson, DJ Lil’ Tal | Virtual | 1995 |
MRMYX PLAYED PAUL JOHNSON
MRMYX – “BUG OUT” Ghetto House at Aoyama Hachi (1st, May, 2019 Wed)
過去に青山蜂でDJしたときにポール・ジョンソンの曲をいくつかかけていました。
全体がゲットーハウスのミックスになっています。
もしよろしければこちらも聴いてみてください。
こちらの記事もポール・ジョンソンへの愛がよく伝わってくる内容でした。
▶︎ Paul Johnson
野田努、渡部政浩(ele-king)
–MRMYX