ピート・ロック(Pete Rock)のアルバム紹介①【Hip Hop Underground Soul Classics】超絶名盤


こんにちは。ミスターミックス(MRMYX)です。

この記事では、ピート・ロック(Pete Rock)の大傑作アルバム “Hip Hop Underground Soul Classics” (2003年) を紹介します。





このアルバムの構成


まず始めに、


この作品は、2枚組みのCDとしてリリースされていて、元々別々だった2作品を1つにまとめたものとなっています。
1枚目が、Pete Rock, InI – Center Of Attention、2枚目がPete Rock, Deda – The Original Baby Paとなっています。

この作品は両方とも良いんですが、圧倒的に1枚目の存在感が強く、ユニークな曲のほとんども1枚目に入っています。僕自身もほとんど1枚目ばかり聴いてきました。DJとかプレイリストで使うレパートリーもほとんど全て1枚目に入っています。

なので、1枚目についてだけ語れば、この作品の内容紹介の90%以上はできてしまうんですね。
それくらい1枚目が濃厚なんですよね。
ということで、この記事では1枚目 “Center Of Attention” のみに絞って書いていきます。

(ちなみに1枚目の “Center Of Attention” は単体でもリリースされていますが、かなり高値で出回っているので、通常の入手方法としてはこの2枚組みCDを買う方法となっています。また、”The Original Baby Pa” に関しては、2003年にこの2枚組みCDとして出たのが最初のリリースとなっています。)






結論:絶対買うべき(聴くべき)

結論から言うと、このアルバムは絶対買った方が良いです。
今の時代、CDを買わなくてもYouTubeでもSpotifyでも聴けるので、とにかく絶対に聴いた方が良いです。

しかも、1回聴いて「わぁ〜よかった〜」で終わる作品じゃなくて、一生のお供になる作品です。

別に、「買わなくても聴ける時代」なんですけど、このCDは内容は90年代ニューヨークのヒップホップにもかかわらずBBEというイギリスのレーベルからリリースされていて、デザインもめちゃくちゃかっこいいんですよね。僕自身も中学・高校時代はずーっと部屋にこれ飾ってましたね。
持ってるだけでテンション上がります。



音楽自体も、これはヒップホップ好きじゃなくても響くと思います。超かっこいいです。
特にヒップホップ好きを自認しているなら絶対に聴かなきゃダメですねこの作品は。

めちゃくちゃハードコアなのに聴きやすいんですよね。
ヒップホップの入り口としても最高だし、単に初心者向けっていうわけでもなく、いつになっても永久に聴ける作品でもあります。

本当に最高です。



「ピート・ロックの代表作ってなんですか?」と聞かれたら僕は一番にこれをあげるし、90年代ヒップホップ全体で考えてもアルバムランキングトップ10に入ります。

さらに言うと、トップ10で、かつ「聴きやすさ重視」で並べたらこれがナンバー1ですね。
90年代ヒップホップって重要作がたくさんあるんですけど、その中でもヒップホップが特別好きでない人がBGMみたいに気軽に聴いてもかっこいいとなるともうこれしかないですね。

しかもアルバムトータルでいいんですよねこれ…。
アルバムの中の何曲かが良いとかじゃなくて、全部が良いんですよ。
その中でも特に推し曲っていうのはもちろんあるんですけど、とにかくフルで安心してかけっぱなしにできる数少ないアルバムの1つです。





作品リリースまでの経緯


このアルバム、元々は1995〜1996年には出来上がっていて、エレクトラ(Elektra)というレーベルからリリースされるはずだったんですが、ピート・ロックのリリース担当者に「パフィーみたいなビートをつくらないとダメよ」みたいなことを言われてお蔵入りになってしまったらしいです。

(パフィー(Puffy)というのはバッドボーイ(Bad Boy Entertainment)というレーベルのボスで、当時サンプリングネタをまんま使いしたポップな曲を量産していました。)

当時は結局エレクトラからは、2曲入り12インチシングルが1枚だけリリースされ、他の楽曲はそれっきりになってしまいました。
そのときにリリースされた曲がこちらです。


Pete Rock, InI – Fakin’ Jax (1996)




そんな苦難を経て、このアルバムは2003年に晴れてイギリスのレーベルBBEからリリースされました。

本当に、無事リリースされてよかったです。
ありがとうBBE。






InI(アイエヌアイ)とは?



このアルバムはピート・ロックとInI(アイエヌアイ)の作品となっています。
ピート・ロックはトラックもつくる、フックも歌う、数曲でラップもする。
そしてInIはひたすらラップをする。

そんな感じで全ての曲ができています。


InIというグループはちょっとマニアックで、このグループとしてはこれしか作品を出していません。
メンバーは、ロブ・O(Rob O)グラップ・ラバ(Grap Luva)ラス・G(Ras G ※同名のラスGとは別人)、マルコ・ポーロ(Marco Polo)DJブーダカン(DJ Boodkhan)の5名。

グループメンバーの中でもピート・ロックの実弟グラップ・ラバ(Grap Luva)だけは、ソロでもその後作品をリリースし続けています。ロブ・Oはアルバムを1枚リリースした以外、ほとんど活動していないですね。



このグループはリリースしている作品は少ないと言ってもラップのかっこよさは半端じゃないです。
完全に「わかってる」メンバーですね。
このアルバムだけで多くの人の耳に届いているはずだし、90年代ヒップホップの歴史に燦然と輝いています。







トラックについて

トラックはほぼ全てピート・ロックがプロデュースしてるんですが、本当に最高の一言に尽きますね。

とにかく音が綺麗で無駄がなく、洗練されています。

この作品の録音の前は、1992年に “Mecca And The Soul Brother” 、1994年に “The Main Ingredient” というアルバムをリリースしているのですが、その2作とは比べものにならないくらい飛躍しています。(僕はそう感じます。)


前の2作はまだサンプリングの生々しさや、レコードのノイズ感、ミックスのアンバランス感などがありましたが、”Center Of Attention” ではそういった「元ネタ感」や「ラフさ」は完全に消え、クールでスリムなサウンドに変貌しています。


相変わらずサンプリングはしまくっているんですが、音が「抽象的」になったというか、元ネタの音楽をほとんど感じさせないというか、ファンクやジャズがはっきりと残っていた前2作から、完全にヒップホップサウンドそのものになってるんですよね。


音色(おんしょく)もファンキーで明るい感じではなく、1995年や1996年という時代を感じさせるクールでひんやりした音色。
テンポもゆっくりになってこの時代のヒップホップだなあという感じがします。


ちょっと前の明るい、アップテンポな曲でもピート・ロックの良さは出ていましたが、このムードこそが完全にピート・ロックの十八番(おはこ)であり、ピート・ロックにしか作れないサウンドだと思います。
(90年代初頭の頃とかはまだ他のプロデューサーも似たようなトラック作ってましたからね。でもこのアルバムのトラックは誰にも真似できないですよ。)





ラップについて

ラップについては、何よりも第一に、前2作はC.L.スムース(C.L. Smooth)が前面にフィーチャーされていましたが、このアルバムではInIがフィーチャーされていることの違いが絶大に大きいです。

とにかく、InIがめちゃくちゃかっこいいです。
そしてピート・ロック本人のラップもめちゃくちゃかっこいいんですよね。
声もかっこいいですね。ピート・ロック。渋い、聴き心地の良い低い声してますね。

みんなクールで抑制が効いてて。騒がしくない。


時代的なものもあると思いますが、ラップのテンションがみんなクールなんですよね。
それでいて、しっかりライミングしていて、声もかっこいいし。

ラップの基本が完璧に出来ている人たちがあんまり力まずにやってるみたいな感じ。



しかも、何気に「マイクリレー」なんですよね。
声がみんな似てるのであんまり派手さはないんですが、ひとりのラッパーがずっとラップしているわけではなく、1曲の中で代わる代わるラップしていきます。
なのである意味パーティー感ありますね。


ピート・ロックのこの時代のトラックにはInIのようなラップがぴったりだと思います。
トラックとラップの相性がバッチリです。



もう1つ言うと、ラップがフック以外の部分もすごいユニークで耳に残るんですよね。
フレーズ1つ1つがしっかりしてるというか。
このアルバムはトラックもそれぞれユニークで記憶に残る曲ばかりなんですが、ラップも輪郭がすごいはっきりしてるんですよね。

それがこの作品が愛されてる隠れた理由の1つだと思います。
実はみんなそこの聴き心地が良くて自然とノッてる、みたいな気がします。







概要としてはこんな感じですかね〜。


とにかく聴いてみてください。
これを部屋でかけると途端にかっこいい空間になります。笑
ムードが一変します。

僕はこのCDを中学2年のときに買って、家のスピーカーで鳴らして、”No More Words” のイントロのピアノからドラムが入ってくる瞬間、あの瞬間にヒップホップとの恋に落ちました。


イヤホンじゃなくて出来ればオープンエアーで低音がしっかり出るスピーカーで聴いて欲しいです。
雰囲気めちゃくちゃ出ます。
というか、そうしないとピート・ロックが作り出した「サウンド」を味わえないです。


ちょっと広め(20〜30畳)くらいの空間が一番ハマると思いますね。
開放感あった方が良い感じですね。
特に夜。
明るさとしては間接照明くらいな感じ。真っ暗はちょっと違う。
季節感とかは特になくて、夏でも冬でもどっちでもイケますね。

あんまり小綺麗なところではハマらないですね。雑多な感じ、ストリート感ある方がいいです。

クラブやパーティーによってはいまだにかけても全然ハマるし、お店のBGMとかにも良いと思います。めちゃくちゃオシャレです。特に服屋とか。
あと汚い言葉もあまり使ってないラップなのでラフめな飲食店とかでかけるのもありだと思います。

大人しく座って聴くような音楽でもないですが、どっちかというと全体的にユルめでラウンジ的なノリですね。




僕のお気に入りは、”No More Words“, “Step Up“, “Think Twice“, “To Each His Own“, “Fakin’ Jax“, “What You Say“, “Props“, “Grown Man Sport“です。ほぼ全てですね。

特に”Grown Man Sport“は上げ過ぎず、下げ過ぎず「常温」な感じで、どんな温度感でもスッと馴染むかけやすい1曲です。

お気に入りの曲だけ触れると、2枚目だと”Baby Pa“と”Blah Uno” です。

どちらもアルバム全体の雰囲気が良いんですけど、特にこれらの曲は繰り返し聴きまくってきました。




ということで、気になった方はぜひ聴いてみてください。


超オススメです。







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MRMYX(ミスターミックス)